ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)

2月26日投稿 3月5日一部加筆 3月11日一般型修正


 最初に本記載のお約束ですが、令和元年度も残り1ヵ月となり、もう気持ちは既に令和2年度に向かっていますので、“今年度”“今年”という表現は令和2年度の施策(令和元年度補正予算、令和2年度当初予算)をそう呼ぶことにします。


ものづくり補助金チラシ


「ものづくり・商業・サービス補助金」がさらに使いやすくなりました』とチラシのタイトルになっていますが、どうなんでしょうか?

 通称:ものづくり補助金と呼ばれている補助金ですが、この補助金は10年近く続いている補助金ですのでご存じの方は多いと思います。今年は、5つの類型で公募が行われます。チラシにも書かれていますので、あわせてご覧ください。

 まずは、大別すると2つの公募形態があります。さらに、生産性向上促進事業は3つの類型、高度連携促進事業は2つの類型に分けて計5類型での公募となります。尚、(新)のマークがついているものは、今年初めてできた類型です。


1.生産性向上促進事業(独立行政法人 中小企業整備基盤機構が実施)

 1-1  一般型

 1-2  グローバル展開型(新)

 1-3  ビジネスモデル構築型(新)

2.高度連携促進事業(経産省本省が実施)

 2-1  企業間連携型

 2-2  サプライチェーン効率化型(新)


 2.高度連携促進事業については、複数企業が連携して行う事業になり、複数企業で行う共同事業で各社に投資が発生するような、関連町工場が結束して何かを行うイメージです。応募される企業は少ないかと思いますので、ここでは説明は省略します。ご要望があれば、個別に対応いたしますので、お問い合わせフォームからお問い合わせください。


◆生産性向上促進事業

業務の目的

中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等、及び一定数以上の中小企業・小規模事業者等の新規ビジネスモデルの構築を支援するプログラムの経費の一部を補助等することにより、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的とします。

事業の実施期限

原則、3万者程度の中小企業・小規模事業者等に対して補助金の交付が終了するまでとします。なお、中小機構第4期中期目標期間終了(令和5年度末)までを最長とします。

3万者とあるのは、3万社の誤字ではなく応募対象が組合等も含まれるためです。おおよその目安としては3年度で3万者ですから1年度あたりでは1万者、ほぼ前年同様と言えます。(昨年実績:申請数 20,803件、採択数 9,531件)尚、採択者数ではなく、総交付金額で判断するとのことで、採択者数は増減します。


1-1  一般型

新製品・新サービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資及び試作開発を支援。

〔補助額・補助率〕

 補助額:上限1,000万円 下限100万円

 補助率:1/2(小規模事業者は2/3)

 *昨年度は、小規模事業者以外でも「先端設備等導入計画の認定又は経営革新計画の承認を取得して一定の要件を満たす場合は補助率を引き上げる」といる規定がありましたが、今年は残念ながら、補助率引き上げはありません。

〔公募期間〕

公募開始:令和2年3月10日(火) 17時~

申請受付:令和2年3月26日(木) 17時~

応募締切:令和2年3月31日(火) 17時(1次締切)

*公募開始とは、役所的に「公募を始めますよ~」と公表した日を示すもので、実際に申請の受付開始は3月26日(木)17時~となります。尚、わずか一週間で締切を迎えてしまいますが、1次締切後も申請受付を3年間継続し、令和2年度中は令和2年5月(2次)、8月(3次)、11月(4次)、令和3年2月(5次)に締切予定です。


1-2 グローバル型(新)

海外事業(海外拠点での活動を含む)の拡大・強化等を目的とした設備投資等の場合、補助上限額を引上げ。

〔補助額・補助率〕

 補助額:上限3,000万円 下限100万円

 補助率:1/2(小規模事業者は2/3)

 *グローバル型は、一般型の派生と考えられます。

〔公募開始〕

4月公募開始


※以下、1-1一般型、1-2グローバル型共通要件

〔申請要件〕

以下の要件のいずれも満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明している中小企業・小規模事業者等。(ただし、申請締め切り日前10ヶ月以内に同一事業(令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業)の採択決定及び交付決定を受けた事業者を除く。)

一 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)

二 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

三 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%増加

(付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したもの。)

四 応募申請時点で補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること

〔加点要件〕

一 成長性加点:「有効な期間の経営革新計画の承認を取得した(取得予定の)事業者」

二 政策加点:「小規模事業者」又は「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」

三 災害加点:

三-1:新型コロナウイルスの影響を受けて、サプライチェーンの毀損等に対応するための設備投資等に取り組む事業者」又は「令和元年度房総半島台風(台風15号)等及び令和元年度東日本台風(台風19号)の被災事業者(激甚災害指定地域に所在する者に限る)

*通常は、交付決定書を受け取った以降でないと補助対象経費にかかる発注はできませんが、三-1のコロナ関連の場合、事前着手のための承認申請書を別途提出することで、それより早く発注を行うことができる特例が設けられました。

三-2:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者

四 賃上げ加点等:

四-1:事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者、又は、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者

四-2:被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

*複数の要件がある加点項目については、どれか1つを満たせばよい。したがって、最大でも添付書類は4点となる。


〔減点要件〕

申請時点において、過去3年間に、類似の補助金(平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援事業、平成29年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業、平成30年度2次補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業、令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業)の補助金の交付を受けた事業者は、審査上の減点措置を講じる。

〔申請要件の実効性担保〕

・申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員に表明することが必要。交付後に表明していないことが発覚した場合は、補助金返還を求める。

・事業計画終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が達成できていない場合に、交付決定の一部取消によって補助金額の一部の返還を求める。

などの記載があります。(一部文章省略)

◎梶野の解説

 この補助金は年々条件が厳しくなっているのですが、今年もさらに厳しくなりました。チラシのタイトルには『「ものづくり・商業・サービス補助金」がさらに使いやすくなりました』となっていますが、思わず「どこがやねん!」とツッコミを入れたくなります。

 昨年度までは、申請要件の最重要項目である付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)の年率3%増は、多くの企業が大半を減価償却費増で満たしていたと思いますが、今年は、人件費総額の1.5%増も加わったために、より厳しくなりました。その分を営業利益から賄うとするなら企業は減益となります。しかも、残業時間規制のため残業費が減るのですから、その分に加えて4.5%(3年で)、実質は6~7%以上増やさなければいけなくなりそうです。

 経済産業省の意図は、だからこそ「生産性を向上させて、より高い利益をはじき出せ!」ということかと思いますが、多くの中小企業はそれができないから補助金を活用して設備投資し、それによって生産性向上(残業削減)に取り組みたいと考えているわけで、全くもって矛盾する施策です。

 しかし、追い込まれて工夫が出るのが人間です。このピンチをチャンスに変えられる企業だけが補助金を受ける資格があるという風に考え、知恵を絞りましょう!何らかの形でコンピュータやロボットに人間の仕事を代替させていくことが王道になるかと考えます。

 審査では、全事業者必須の提出書類における審査項目は3点、加点項目は5点と配点が決まっています。加点要件については、確実に採択を受けるためには「二 政策要件」を除く3つは確保しておきたいところです。「三 災害要件」については、まだ災害を受けていなくても、事業継続力強化計画の認定を受けることで満たすことができます。合否ラインにたくさんの申請書が並びますので15点の差は大きいです!

 経営革新計画に事業継続力強化計画、この2つの認定を受けることは、確かに面倒です。面倒だからこそ、安直に補助金を欲しがる経営者をふるい落とす目的があると考えます。印象点という項目があるとは聞いたことがありませんが、審査員も人間ですから印象は確実に採点に影響を及ぼします。「うちは、本気なんです!」という姿勢を示すためにも認定は受けた方がよいかと思います。


1-3  ビジネスモデル構築型(新)

中小企業30者以上のビジネスモデル構築・事業計画策定のための面的支援プログラムを補助。(例:面的デジタル化支援、デザインキャンプ、ロボット導入FS等)

〔補助額・補助率等〕

 補助額:上限1億円 下限100万円

 補助率:定額補助

◎梶野の解説

この類型については、現状分かっているのはここまでです。ちょっと分かりにくいのですが、これは中小企業庁が行ってきた「スマートSME(中小企業)研究会」という専門家会議の答申を受けての施策と考えています。

掻い摘んで言うと、一般企業向けではなく、中小企業にITをする支援をする企業・団体向けと言えるかと思います。1つ考えられるのは、多くの機能を利用企業が選択して活用できるようなクラウドサービスを提供する企業、グループウェアやERPパッケージを提供する企業向け。そして、もう一つ考えられるのは、企業がIT導入をする時の相談相手・支援者となる企業・団体向けです。上限1億円という補助額からしても、前者の可能性が高いと思いますが、それを中小企業に広める地域における実働者としてITコーディネータの活用も検討されているようです。


 以上で類型ごとの説明は終わりですが、もう一つ、今年度の大きな変化は、申請の電子化が行われることです。従来は、電子申請も可能でしたが、今年度は必須です。(5類型すべて)

今年度からjGrantsという補助金の申請・届出ができる電子申請システムが使われることになりました。電子申請にあたっては、事前に「gBizIDプライム」という証明書を取得してIDを持たなければなりませんが、印鑑証明書などを郵送し2~3週間で発行されということです。従来の電子証明のように高い申請料もかからず、カードリーダーも必要なくなりますので、かなりハードルは下がったと思います。これが、チラシのリードに書かれている「使いやすくなりました」なのでしょう。(苦笑)

 「jGrants」「gBizID」で検索の上、ご確認ください。


 さらに、ドタバタで発表され、具体面が不明だった「新型コロナウィルスの感染症の影響を受ける事業者への支援策」が加点要因として取り扱われることが決まりました。感染症への対応としては、例えば、以下のような事例が想定されます。

-部品の調達が困難となり、自社で部品の内製化を図るために設備投資を行う

-感染症の影響を受けている取引先から新たな部品供給要請を受けて、生産ラインを新設・増強する

-中国の自社工場が操業停止し、国内に拠点を移転する 等

ということで、例に挙がっている3つとも「サプライチェーンの毀損」にフォーカスされています。単に減損した売上回復というだけでは災害要件の加点対象にならない可能性が高そうです。他に、「等」に該当することは思いつきません。お役所の書類では、後々の逃げのために断定したくない時に「等」と付けてあいまいにするのが一般的ですので、その類ではないでしょうか。




最後に

 この補助金は経営の専門家が審査しますので、嘘やハッタリは通用しません。論理性と客観性を備えたレベルの高い申請書を提出しないと採択されません。そのためには、基となる経営計画が論理性と客観性を備えた実現可能な計画として存在しないといけません。この補助金に応募申請をされたい方は、ぜひ、経営計画の見直しからご相談ください。

 採択された申請や経営革新計画策定の支援実績がある私にお任せください。まずは、遠慮なくご相談ください。お問い合わせフォームでのお問い合わせについては無料です。


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余談

 チラシのリードに書かれている「使いやすくなりました」については、皮肉たっぷりと書きましたが、2つ感動したことがあります。

 1つ目は、今年新たに「公募要領(概要版)」という資料が作成されました。「文字ばかりで読む気もしないし、書いてあることがさっぱり分からん!」と経営者の皆様方に大不評だった公募要領の分かりやすい版ができたことです。これは、分かりやすく、思わず拍手しました!文字ばっかりの公募要領読む前に、この概要版を先に見て全体像を把握した方が理解しやすいかもしれません。

 但し、「よくなったでしょ?」とアピールされていることの中には、自己満足としか思えない、経営者側には実感できないことも含まれているのは笑えました。まあ、このあたりはご愛嬌ということで。

 2つ目は、今年から経済産業省内の主管部署が中小企業庁から独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)に変わりました。それによって、「中小企業生産性革命事業」をひとまとめにしたWEBサイトができました。これもわかりやすく、ワンストップで施策が見つけられます。これも拍手です!中小機構さん、グッジョブ!!

 中小企業生産性革命事業のWEBサイト

 各補助金のサイトへのリンクされており、ここからものづくり補助金のサイトへ飛べば公募要領や公募要領(概略版)も入手できます。


 全然、話は変わりますが、今年の補助金、ちょっと引っかかる点があります。ずっと見てきているから感じる違和感とでも言えばよいでしょうか?ここでは詳しくは書けませんが、お会いする方にご希望があればお話ししたいと思います。



 

GF経営研究所

主に富山県内で活動する中小企業専門の経営とITのコンサルティング事務所です。

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