DX時代に有効な資格取得のすすめ

 DXの時代に必要な資格と言うと、ネット上にはデータサイエンティストとか、PythonやSQL(共にコンピュータ言語)などを挙げている記事を多く見かけます。これらに関する資格はもちろん有効だと思いますし、異論を挟むつもりはありません。

 しかし、経営者が自社の社員に勧める、或は個人的に一念発起して目指すには専門的過ぎて、自社内にいつでも教えてくれる先輩がいるなどの環境がないと独学で習得、資格取得するのは難しいし、時間がかかりすぎます。

 DX時代に必要な資格は、そんな資格ばかりではありません。これまでの社会人経験や自社内の業務に詳しいからからこそ活かせる資格もあります。働きながら平日の夜や土日を使って勉強するには、学習範囲が実務と一致しているか隣接していないと負担が大きすぎるでしょう。あくまでも“働きながら”で取得できる、且つDX時代に有効なという視点で、経営者の方が中堅社員さんにお勧めできる、或は一念発起して幹部昇進や独立起業を目指すサラリーマンの方にお勧めする資格をご紹介します。もし、経営者の方が、30代或は40代前半のお若く、従業員数が50名未満くらいであれば、ご自身で取得されることを検討されても良いかもしれません。


“ITコーディネータ”という資格をご存じでしょうか?

 今日お勧めするのはこの資格です。

 この資格は、ITと経営の橋渡しをするという使命のもとに生まれた資格で、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に最も活躍する資格の一つとされています。

注)以後、この記事では、ITとICTは同義語として扱い、ITの言葉に統一して記載します。


 この資格の面白いところは、経済産業省推進資格という聞きなれない肩書を持っているところです。普通、資格は国家資格と民間資格に分類されますが、国策により誕生した資格ということで、国家資格ではないがそれに近い資格として位置づけられており、内閣府や経済産業省の公文書にも度々登場したり、国の施策の中で士業と呼ばれる国家資格と同列に扱われている資格です。ただ、一般的な分類はあくまでも民間資格であるがゆえに、民間への浸透度は低く、何らかのきっかけで支援を受けた企業や積極的にDXを推進できる資格を検索された企業以外ではほとんど知られていません。


 では、なぜ国が音頭をとってこの資格を作らなければいけなかったのか?それは、ITコーディネータの使命で説明できます。まず、活動領域に特徴がありますが、『中堅企業以下の中小企業中心』と定義されています。そして、ITコーディネータの使命は大きく分けて3つです。

1.ユーザー企業の経営課題解決にITを活用するアドバイスを行う役割

  その先に競争優位性を確保・維持するためのIT利活用を創造する役割

2.難解なITの仕組みやIT用語をわかりやすくユーザー企業経営者に伝え、逆にサラリーマンであるIT企業の担当者にユーザー企業経営者の目線の意図を伝える通訳の役割

(経営者にとってIT用語が難解であるのと同様に、サラリーマンには経営者の言葉も難解です。双方がお互いの言葉を誤解する可能性が高く、それを防ぐ通訳が必要です。)

3.ITを有効に活用するためにユーザー企業側の社内体制の改革や従業員指導の役割


 これらの使命を果たすためには、経営者目線で企業の本質や経営課題等を複眼的に見れることが求められます。全体を見渡す“鳥の目”と細部を見つめる“虫の目”の両方を同時に持ち合わせように、養成課程で指導されます。ITを本当の意味で活用し、その能力を最大限に引き出すためには、会社全体と経営戦略、商流、金流、人流などを見渡した上でIT活用の設計図を描く鳥の目と、利用者の利便性からセキュリティまで考慮する虫の目が必要だからです。

 平たく言えば、これまでの社会人経験の延長線上ではあるが、もう1~2周り視野を広め、1~2段ステップアップして経営者(CxO)レベルの知識、思考、判断ができる人材ということになります。

注)CxOとは、CEO、CSO、CIOなどの最高〇〇責任者の総称。取締役や執行役員と近い意味でご理解ください。


 ITコーディネータが、ITの専門資格ではないことをご理解いただけたでしょうか? ITそのものの資格ではなく、経営にITを活かしていく専門資格、ITの利活用を経営視点でトータル的にアドバイスする資格です。ITと経営の両面に通じた専門家とされていますが、どちらがより強いかは同じ資格を持っていても人によって様々です。その割合は必ずしも5:5ではありませんし、片方しか分らない人もいません。



 次に、目線をDX時代に向けます。DXには、3つの段階があるとされています。

 第1段階 デジタイゼーション(単純なデータ化、単純なIT化。個別業務のIT化)

 第2段階 デジタライゼーション(データを活用した業務効率化的プロセス変革)

 第3段階 デジタルトランスフォーメーション(ITを活用した新しい価値、新しいビジネスモデルの創出。顧客や仕入れ先などの社外をも巻き込んだ変革)

注)端的に表現するため、定義とは厳密に言えば若干違います、イメージ的に捉えてください。定義を正確に知りたい方は、別途検索して調べてください。


 第2段階のデジタライゼーションまでは、これまで自社が歩んできた道(事業や業種)から大きく離れるわけではなく、延長線上にあることなので発展意欲のある経営者の方なら気付ける範囲ですが、第3段階のデジタルトランスフォーメーションとなると、全く別業種へ進出という結論や設備投資等の新たな投資を伴う挑戦になることも少なくありません。そこには経営者の勇気と発想が求められます。勇気はともかく、発想は優秀な経営者様でもなかなか難しく、そう簡単ではありません。そこに、ITコーディネータの未来への解決力が活きてくるわけです。これが、DX時代に最も活躍する資格と言われる所以で、その存在価値が改めて見直されています。

 別業種への進出や新たな投資を伴う挑戦と言っても、むやみやたらに行うわけではなく、かつて幾多の企業が創業時とは違う業種に進出し大発展を遂げたように、企業内に蓄積されているノウハウ等の知的資産を活用して行うものなので、無謀なことではありません。企業内にある強みを一旦見直し、そこにデジタル技術を加えることで従来は考えられなったことが可能になる、『できないをできるに変える』のがデジタルトランスフォーメーションです。

 デジタルトランスフォーメーションは、すべての企業に可能性をもたらしますので、自社だけが恩恵を受けるわけではありません。逆に全く別業種から進出してくる企業が自社の市場シェアを奪ってしまう可能性も十分にあるということでもあります。DX時代に向けては、自社の攻めと他社からの守りの両面から見ておかなければいけません。

 表現方法を変えてみましょう。DXは、ITを活用することで今まで蓄積してきたノウハウ等の知的資産の価値を飛躍的に高めます。それは、社員の役割を変え、より高い付加価値を生み出す仕事へとシフトしていくことになります。その当然の結果として、会社の利益を増やし、従業員の報酬とやりがいを高めます。

 DX時代とは、こんな変化が頻繁に起こっていく時代です。忘れてはいけないのは、企業発展に向けて積極的に攻めて出る大チャンスでもあり、全く想定外の異業種に攻め込まれる大ピンチでもあります。対応できない企業は、容赦なく新たな競合企業の餌食となってしまうことは必定と言えます。


 しかし、ただ待っていてもDXに向けて動けるようにはなりません。従業員さん達にとっては、個々人としての不利益があります。どんな不利益かと言うと、新しいことを覚えなければいけないということです。経営者にとっては「そんなこと!?」と言いたくなりますが、一時的に新しい役割(仕事)に慣れるまで個人的な負担が先に頭に浮かび、どうにかして逃れようと考えてしまいます。ですから、“今までどおり”では積極的に動いてくれることは期待できません。予め社内に強力な推進者を育てるか、或は外部から刺激を与えてもらうか、いずれにしても経営者がまず動くことが貴社のDXへの第一歩になります。


 ITコーディネータの立ち位置としては、豊富な(幅広い)ITに関する知識で社長の相談相手を務めるという存在になりますので、社外ではコンサルタントであり、社内にいればCIO(最高情報責任者)やCSO(最高戦略責任者)、CDO(最高デジタル責任者)、社長室や経営企画室に最適人材となります。社長が一人で急速な変化を続けるITの世界の情報収集をし、活用を模索してくのは無理があります。適切な助言を出来る参謀を備えておく必要があるのではないでしょうか?

 ITコーディネータは、従来はIT系企業に勤めていた方が独立を志した時に目指す資格となっていた時期もありましたが、近年、このような理由から自社内にITコーディネータを育成しようという企業が増えています。そんな相談相手が社内に居れば心強いですよね。当然の流れかと思いますし、これからこの流れは一層進むのが必然の流れかと考えます。

 どうですか?私がITコーディネータ資格をお勧めする理由がお判りいただけたでしょうか?

 経営者様には、経営者自身がお取りになる、或は将来幹部にと見込んでいる中堅社員に取らせるという2つの方向をお勧めしております。また個人の方には、自分に力を付けたい向上心の高い方にお勧めしています。興味が湧かれたら、ITコーディネータ協会ホームページをご覧ください。

 ITコーディネータ協会ホームページ (ITコーディネータ資格説明ページ)

 https://itc-shikaku.itc.or.jp/get-itc/



 では、どうすればITコーディネータの資格が取得できるか?

 要件は2つです。1つは試験に合格すること、もう1つはケース研修と呼ばれる育成研修を受講することです。

 試験は、CBT方式で行われます。年3回の機会(実施期間)があり、今年度は、5/26~6/27、9/15~10/17、2023/2/2~3/6の期間に実施されます。

 ケース研修は、6日間の集合研修(一部会場でオンライン研修もあり)で、他の方と切磋琢磨しながら学ぶスタイルになります。ケース研修の名前通り、実際の企業コンサルティング事例を基にして作られたケースに沿って、ITコーディネータに求められる能力、知識、経験、判断などを実践的に学びます。


 このケース研修は、1年に2タイミング開かれます。会場は、全国各地にありますが、なんと!富山にもあります!!

 但し、富山会場は年1回のタイミングしか開かれておらず、その機会を逃すと翌年まで待つか、交通費をかけて他県まで行かなければなりません。交通費もそうですが、6日間他県まで研修に行くのは体力的に結構な負担になりますので、富山開催で受けたいところです。(今年度は、7/30~9/24に開催)

 なんと、今年度は特例でもう1回開催されることになりました。2023年1/7~2/18にまでの開催で集合研修です。

 富山開催は、現在参加申し込み受付中で、12/24締切りです。6日間の日程は基本的に土日で、6日間の研修後、忘れないうちにすぐに試験を受けられるように合理的に設計されています。(2023/2/2~3/6の試験が受けられます。)

 詳しい日程、会場等はこちら→ https://itc-shikaku.itc.or.jp/casecourse/toyama-end2-1/


 試験受験費用は、19,800円(消費税込み)

 ケース研修受講費用は、220,000円(消費税込み)

 他に、合格したら登録認定料、22,000円(消費税込み)が必要です。


 さらに朗報です!

 厚生労働省の『人材開発支援助成金』の支給対象資格であり、なんと!?研修受講費や試験費用の75%が国から補助されます。(但し、規定に該当する企業の正規従業員である必要があります。)

 今年4月から新たに導入された最高補助率の“高度デジタル人材訓練”に該当します。

 厚生労働省の資料はこちらからご確認ください↓

 1.周知用リーフレット

 2.令和4年度版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版

 ITコーディネータは、ITSSのスキルレベル4(ハイクラス)に該当しますので、訓練要件を満たしておりますので、対象資格・対象研修となります。但し、事業者要件と労働者要件も満たす必要がありますので、令和4年度版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版でご確認の上、社会保険労務士さんや富山労働局にご確認ください。


 資格は、更新を続ければ一生ものです。何より、試験学習やケース研修で学べる事、気付けることは、本当にその人の宝となるでしょう。私の時は、研修費用だけで525,000円。しかも、当時のケース研修は富山会場がなく、東京で受講して毎月5日間×3ヵ月間の計15日間(現在は6日間)は相当大きな投資でした。交通費や宿泊費、それに受講生仲間との交流費(飲み会費)合わせて100万円近い支出とその間稼げない(当時は会社を経営していた)のは、相当に大きな投資でした。しかし、2年ほどで回収できた感じです。お金に換算できない人脈とか考え方とか習慣とかも含めてですので、正確な投資回収期間ではありませんが、自身の感覚として「けして高くはなかった。」と実感できたのは2年以内だったと記憶しています。


 一般的には、許認可事業の要件資格である国家資格以外は、取得費用を会社で負担されない企業は多いかと思います。しかし、それは法律で決まっていることでも何でもありません。経営者の方の考え方次第ですよね?

 これからどんどん進むDX化、さらにはデータサイエンスにメタバース・・・すべてご自身一人で対応していかれるおつもりですか?世の中がどう変化していて、さらにこれからどう変わるのか?、

 もう社長一人の能力に依存する時代は終わったと考えるべきでしょう。そう考えると、ITコーディネータの有資格者は、今後の企業経営に必須の資格というのも頷けるでしょうし、そんな人材を育てるためなら先行投資としては安すぎる費用ではありませんか?

 また、『資格は、個人に帰属するもの』これが一般的な経営者感覚かと思います。私も同感です。但し、だからと言って他の資格と同列に並べて、個人負担でよいのでしょうか?「資格を取らせてやっても、社員は辞めるから・・・」おっしゃるとおりです。ですが、それは、社員として見ているからではありませんか?役員候補、自分の右腕として見れば辞めること前提の発想にならないのでは?

 こう書いておいて、言葉を覆すようですが、全額会社負担と言うのもお勧めできません。それは、自分の意志がない方は学習が身に付かず、試験に合格しないからです。「折角、ウン万円も使ったのだから、絶対に取得する。」という決意に導くためにも、自己負担も残すべきかと考えます。そう考えると『ケース研修費用だけは会社負担とする』というのが落としどころではないでしょうか?会社負担にするのではなく、資格取得後に、報奨金として費用分の金額を支給している企業様もありますね。

 どうしてもご不安な場合は、一時的に会社が費用を貸し付け、金銭貸借契約を従業員さんと結んで『〇年以上勤務した場合は、返済を免除する』とかの条件を付ける方法を取ってらっしゃる企業様もあるようですね。但し、この場合は、労働基準法的にグレー領域にあるようですので、社会保険労務士さん或は弁護士さんにご相談の上、実施なさってください。


 これからどんどん進むDX化、AI、さらにはデータサイエンスにメタバース・・・今後のビジネス環境は間違いなく大きく変化し、ITがその中心を担っていきます。しかも、恐るべきスピードで。「自分が現役の間はなんとか・・・」その淡い期待は、恐らく裏切られることでしょう。貴社存続・発展のために、考えてみませんか?

 「個人としてITコーディネータ資格の受験を検討している」「社員にITコーディネータ資格を取らせる検討をしたい」など、ITコーディネータ資格の取得を検討されている方のご相談を無償でお受けします。お問い合わせフォームからご連絡ください。

 お問い合わせフォーム(外部サイトに接続します)

 

注1)最後に、途中から企業経営者の方向けに偏ってしまいました。個人として自主的に取得を検討されている方は、それほど、経営者の方に強くお勧めしたい資格であるとご理解いただき、ご容赦ください。

2022年9月16日修正・追記

ITコーディネータ育成のケース研修の本年度富山開催が追加されたため、及び一部文章の表現を修正しました。

GF経営研究所

主に富山県内で活動する中小企業専門の経営とITのコンサルティング事務所です。

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