パソコンが買えない!?

〔はじめに〕

 買えないって、変な表現ですね。

 もちろん、金銭的に買えないわけではなく・・・

 実は、ノートパソコンを新しく買い替えたいのですが、なかなか・・・つまり、買えないのではなく選べないと言う方が正確な表現かもしれません。

ここ3~4台は、機種選定に大体3ヵ月くらい掛かっています。

「ITコーディネータなのに?」って質問が返ってきそうですが、だから選べないのです。


 私のような仕事をしていますと、「どんなパソコンを買えばよいか(無料で)推薦して」と安直に言われることが公私共に多々ありますが、実際にはそんな簡単なものではありません。一般論や無責任な発言ならいくらでも無料でお答えしますが、立場上それはできません。私は3~4年で買い換えますが、お客様は10年近く使われる場合も少なくない(お勧めしません!)ので、責任重大です。本当に相手のことを考えるなら、きちんと使用状況の調査をし、今後のソフトの導入予定や方針、ITリテラシー(パソコン操作能力)なども確認した上でないと簡単には推薦できないのです。

 この記事では、私の機種選考過程を明らかにしますので、ちょっと専門的な用語も出てきますが、わからなくても最後までお読みいただければ、雰囲気というか機種選考の概要が分かっていただけるかと思います。


 PCにあまり詳しくない方は、市販の機種(既製品)を選ばれるかと思います。そういう場合は、電器店で店員さんに相談されればすんなりと決まるのかと思います。或いは、会社で一斉に導入する場合は、予算や既存システムとの適合性から選択の余地が少なく、決めやすいかもしれません。しかし、既製品機種の多くは、初心者向けに不要なソフトが入っていたり、私の使い方的にはスペック的に不足していたりする場合がほとんどです。

 私の場合は、BTOと呼ばれるセミオーダー品を買うので、選択の幅が非常に広く、それが逆に悩みの種になってしまいます。BTOはBuild To Orderの略で、メーカーはパーツで在庫し、受注後に組み立てて出荷するスタイルの総称です。いわゆる受注生産型です。ユーザー側のメリットとしては、価格が既製品メーカーよりお手頃なこと、予め入っている余分なソフトウェアが少ないことと、自分の要件に合ったPCに近いものを作ってもらえるということです。すべてが希望通りにできるわけではないのでセミオーダーということです。DELLコンピュータなどが代表的なBTOメーカーです。


 私の機種選考は、まずメーカーで無条件に選考対象から外すものがあります。それは、中国系企業の製品とAppleです。驚かれるかもしれませんが、人生で今まで一度もApple製品を購入したことがありません。ご縁がないのです。

 それは、40年以上前、初めてパソコン(当時はマイコン)に出会った時に遡ります。当時、NECのPC-8001、シャープのMZ-80、そしてAppleの3機種が選択肢としてあったのですが、NECのPC-8001を選んだのが始まりで、それ以来一度も縁が交わることはありませんでした。


〔機種選考過程〕

 さて、核心の機種選考ですが、私の場合は、まずはCPUとメインメモリの容量が第一要件、続いて記録容量と液晶画面サイズまでが必須条件です。あとは、希望要件がいくつかあり、それらが標準装備されているか或いはカスタマイズで装備可能かどうかということで判断します。最後にもう一つの必須要件である価格、30万円以下(税法上の問題)のものが対象となります。


 今使っているPCは、1年半前に買いましたが、その時も3ヵ月掛かって決め切れず、やむなく1年だけのつなぎ導入のつもりで買いました。記憶装置の主流がHDDからSSDに交代する初期段階で、HDDではすぐに使えないPCになってしまい、SSDはまだ価格的に割高なので1年先延ばし策を取った次第です。3万円ほどで格安品を買いました。今回は、もう先延ばしをする必要はありませんので、3~4年使えるものを選ぶ必要があります。

 CPUとメインメモリの容量は、現在使用しているPCのタスクマネージャーを見れば分かりますが、常に100%近い稼働量になっています。なので、スペック不足は明白ですが、これまでの経験と時代の流れ(要求スペックの推移と傾向)を見て、自分の使い方に合った要件を出します。

 細かい話は省略しますが、CPUは、intelなら第10世代以降のi7、AMDならRyzen4500以上となりました。一般的なオフィスワークならi5で十分です。メインメモリの容量は、8GBでも使えないことはありませんし、必要があれば増設すればよいのですが、BTOメーカーは出荷後のメモリ増設を認めていません。なので16GB(8GB×2スロット)にしました。どうせ増設できないなら、16GB×1スロットより8GB×2スロットの方がよいので。一般的なオフィスワークなら8GBでよいでしょう。

 あとは、記憶装置ですが、もうHDDはあり得ません。SSD一択です。1年先延ばしは正解でした。価格的にも落ち着いてきました。私の場合は、かなり多くのデータを保存しているので、最低1TBは必要です。一般的なオフィスワークなら512MBでよいでしょう。但し、画像や動画を多く保存する場合は、もっと大容量が必要です。逆に全部サーバやクラウドに保存する場合は、256MBでもよいかもしれません。(インストールするソフトウェアの大きさで変わります。)

 液晶画面サイズは、私の場合は重要です。お客様にお見せしながら打ち合わせすることも少なくないので、最低14インチは必須です。そうでなくても老眼ですから、14インチ以上の方が見やすいでしょうね。重さは犠牲にします。


 今回の機種選定は、現在の機種導入から1年経った昨年12月から始めました。昨春のコロナ禍でオンライン会議が増えてから、スペック不足が気になるようになってきました。本来なら直ちに買い替えるべきでしたが、騙し騙し使っていました。しかし、いよいよスペック不足が致命的になってきたのです。

 当初は、CPUはintel第10世代のi7一択でした。その他の要件も明確でしたので、すぐに見つかると思っていたのですが、全部を満たす機種がありませんでした。それで決めかねていましたが、BTOメーカーは大体毎週キャンペーンがあります。週によって、同じ価格でSSDの容量が増設されたり、或いはマルチプレイヤーが格安で装備されたり「今なら・・・がお得!」というようなサービスが週替わりで出てきます。それに惑わされて有利なキャンペーンを待っていたのもあります。


〔予想外な環境変化の影響〕

 そうこうしているうちに、AMDのRyzenシリーズがかなり優秀なCPUだと分かってきました。AMDというと、一昔前はintelの廉価版CPUであるCeleronの代替品として、低コストなCPUというイメージでした(個人的な見解)。それが、今ではintelに並ぶ、機能によっては超えるCPUを作っています。それがRyzenシリーズで、グラフィックボード(Radeon)の機能の優秀さは目を惹くものがあります。

 グラフィックボードは、動画再生をスムーズにするなどに特化したボードです。それだけにゲーミングPCと呼ばれるタイプのPCには必須のアイテムとなっています。派手なアクションを伴うゲーム、e-sportsで能力を発揮します。このゲーミングPCの分野では、すでにRyzenシリーズがCPUの主流となっています。

 BTOメーカーのサイトでいろいろスペックのカスタマイズをやってみると、私が求めているPCは、一般的なオフィスタイプの機種をベースにカスタマイズするより、ゲーミングPCをベースにカスタマイズした方が、理想に近いものが、しかも安く実現することがわかりました。それは、ゲームをするわけではありませんが、画像編集をやったり動画再生と同時作業で何かをやったりするので、結構CPUに負荷がかかります。CPUの負荷を減らすためにグラフィックボードがあった方が使い勝手が良いのです。これは、自分でも意外でしたが、ゲーミングPCがピッタリでした。しかし、最大のチャンスである3月のキャンペーンでも見つかりませんでした。


 一方のintelも負けじとCoreシリーズの第11世代を投入してきました。これで、第10世代の価格が下落する或いはBTOメーカーが在庫処分するとので、チャンスが出てきます。

 その一方で、世界的な半導体不足はPCにも影響を及ぼし、メーカー側もスペック構成に苦慮している様子でした。需要の多いCPUは明らかに品不足になり、一時的に選択の幅が狭まってしまいました。


 頃を同じくして、今度はWindows11の話が出てきました。Microsoftは、Windows10が最後のWindowsで、もう新しいバージョンのWindowsは出さないと明言していましたが前言を覆してWindows11のリリースを発表しました。

 これは由々しきことです。早々に要求スペックが発表されましたが、それほど高いものではなく、ここ3年くらいで発売された機種は、大体いけそうです。では、なぜ前言を覆してまでWindows11のリリースしなければいけないのか?Windows10では行き詰まりがあり、将来がないことは明白です。じゃなければ、わざわざ企業姿勢を疑われるようなことをしてまで新しいOSを出す必要はありません。


 OSが新しいものになると、当然いくつかの画期的な機能が公開され出来ることが増えていくので、それによってそのOS上で動くアプリも進化していきます。アプリの進化は≒ファイルサイズの大型化を伴うので、アプリの要件スペックが上がります。と言うわけで、今PCを買う場合Windows11後のことを考えたスペックを準備する必要があり、その検討も必要になってきました。


〔ようやく購入〕

 そんなこんなで7月に入ってようやくAMDのRyzen4700を搭載した新PCを購入しました!新PCは、A社製、私が最も使い慣れたメーカーです。これで4台目になります。キーボードの沈み込み具合が深すぎず浅すぎず、反発力も程よくタイピングがしやすいのが気に入っているところです。仕事上、いろいろなメーカーのキーボードを触りますが、A社は秀逸です(私の主観です。異論もあるかと思います)。問題点は、いつも液晶から壊れるところ。なので5年はもちません。現在、使っているものはB社製ですがキーボードが気に入りません。1年だけと思って買いましたが、今でも慣れません。使いにくいです。仕事上で欠かせない相棒なので、こういう相性は大事です。あとは、原因不明のトラブルが時々発生するところ。パソコンも機械ですから、当たりはずれというか個体差がありますが、B社製はデスクトップ、ノートを問わず、意味不明なトラブルが度々起こります。何度か再起動すると何事もなかったように動くのが不思議です。良いところは安さですね。逆にそれしかありません。

 ちなみに、今回買ったのは、ゲーミングPCですが、オフィス使用も考慮されたタイプです。おかげで、ほとんどカスタマイズすることなく半年前より10万円ほど安く買えました。ゲーム用には中途半端なのでしょうが、ビジネス用ノートとしては最強レベルです。

 今回、半年以上かけていろいろ苦悩する中で頭が柔らかくなった部分があります。それは、当初マルチドライブは必須要件だったのですが、外付けで構わないと思えるようになったことです。DVDやCDが必要になるシーンは限られており、外付けがあれば十分と思えるようになりました。そういえば、記録装置もSDD1TBでは不安で、HDDも付けようか悩んでいましたが、これも必要な時に外付けする考えに変えました。外出時は常に持ち歩くPCなので、すべての機能が必要と考えていましたが、断捨離できたのは進歩でした。

 あと、LANポートとVGA接続ポート(プロジェクター用)も諦めました。プロジェクター用の接続端子としては、HDMIがあるのでVGAは不要と考えました。会場によってはVGAケーブルで用意されている場合もありますが、実際この1年間でHDMIのないプロジェクターには出会っていないので、VGA→HDMIの時代の変化は完了したと判断しました。LANポートの方は、同じくセミナー会場などで無線LANが使えないところはほとんどないので、これも断捨離しました。宿泊施設では未だに有線LANのところもありますが、セキュリティ上宿泊施設の有線LANは使用しないので、スマホのテザリング接続で問題ありません。月の半分も出張するようになれば別ですが、その時はスマホをデータ使い放題の契約に変えればよいので、大丈夫と判断しました。


 ただ、これには後日談があります。今使っているPCからデータ移行させる際に有線LANが必要でした。無線LANでできると思っていましたが、やってみるとできませんでした。そこで、有線LAN→USB-Cへの変換アダプタを後から買いました。他にも外付けのマルチドライブは別買いしました。

 いかがでしょうか?


〔購入を決めるためのスペック判断材料〕

 PCのスペック判断では、これだけ多くのことを考えないといけないのです。もう一度箇条書きに整理します。

(検討スペック)

・CPU

・メインメモリ

・グラフィックボード

・記録装置

・マルチドライブ

・液晶画面サイズ

・無線LAN規格

・ビデオ接続端子

・USB接続端子

・SDカード接続端子

・OS(Windowsでも、PROかHomeか)

・付属ソフト

 -セキュリティソフトのライセンス期限*1

 -Officeソフトのライセンス期限*2

 -DVD再生ソフト*3

 付属ソフトは、基本的にはない方が得ですが、次の場合はあった方が得になる場合もあります。

*1セキュリティソフトは、基本的には30日無料タイプが多いですが中には1年ライセンス付きなどもあります。旧機がライセンス期限切れを迎えるタイミングなら契約更新するより安くなる場合もあります。

*2旧機で使っているOfficeソフトのサポート期限切れが近づいているなら、新たに買うより安く導入できます。

*3 DVD再生ソフトは、インストールされている場合とされていない場合があります。外付けの場合も再生ソフトが付いていないタイプが一般的ですが、別に買うより付いている方がお得なのが一般的です。


〔パソコン発注について〕

 いずれにしても、使う人がどのように使うのか把握しないと最適なスペックは導き出すことができません。簡単ではないことがお判りいただけたでしょうか?

 私の場合は、次の買い替えのことを普段から意識しながら仕事していますので、すぐにスペック要件はまとまります。それでも、お得に買おうとすると時間がかかってしまいます。ですから、時間に余裕をもって早めに調査に動きますし、知識があります。しかし、システム管理者がいらっしゃらない一般企業では難しいでしょう。

 多くの場合は、OSのサポート期限切れか業務ソフトの入替時が多いかと思います。業務ソフトの入替時は、そのベンダーに合わせて新PCを発注されることも多いかと思います。

 しかし、それが最適なPCとは限りません。

 ですが、よく考えてみてください。ベンダーの営業の方の立場で考えると、あくまでも新しい業務ソフトが動くという面で新PCのスペック要件を求めるだけで、実際に業務内容や一人一人の使い方にまでは踏み込みません。パソコンを選んであげるのに時間をかけても、その分の費用をお客様企業が払ってくれないからです。或いは、後でクレームを受けないために2周りも3周りもハイスペックな機種を選んできます。

 長い記事になりましたが、ここまで読んでいただければわかるように、PC選びは高い知識と経験、それに実情調査力と今後の企業戦略を理解していないとできない高度技術なのです。それをタダでやってもらおうという発想が間違っているとは思われませんか?


 IT導入は、通常の物品購入とは違います。納入業者さんに「見積もってきて!」では、結果的にほぼ確実に損な購入をしてしまいます。

選択を失敗しないためには、専門家にきちんと相談し、高すぎず低すぎない適正なスペック要件を示してもらうのが良いかと思います。そこに多少の費用が掛かろうとも、全体の投資費用や成果等トータルで考えれば、それが得な方法だと断言できます。


 私の方は、特定のメーカーとの販売代理店契約はしておりませんので、代理購入・納品はできません。特定のメーカーと繋がらないことが企業様に対してゴリ押ししないというメリットを提供できると考えているからです。スペック要件リストは提供できますし、BTOメーカーからご購入の場合は、若干の有料になりますがPC操作のお手伝いをさせていただきます。


〔購入・・・その後〕

 新しいパソコンを買ってから2週間あまり経過しましたが、まだ本格的に新しい方は使っていません。4連休に1度目の移行を行いましたが、フォルダの移行はできたもののファイルの移行には失敗しており、2~3日前に2度目の移行を行いました。データ移行だけで数時間かかるので、休日か時間に余裕のある日の夜中とかにしかできないので、やり直しでもすぐにはできないのが辛いところ。幸い2度目は成功で、上手くデータ移行は完了しました。

 他にも、後から入れたソフトウェアなどは自動で移行してくれませんし、細かい設定の調整やエクスポート・インポートが必要なこともあります。現状は8割方の設定調整も完了しましたが、Microsoftのお節介と言うか彼らの都合で一方的に私が望まない設定に置き換わっている部分を修正しなければなりません。これが結構厄介で時間がかかります。本格的に新しいパソコンを使いだすのは、週明けからになりそうです。

GF経営研究所

主に富山県内で活動する中小企業専門の経営とITのコンサルティング事務所です。

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