IT導入補助金

 最初に本記載のお約束ですが、令和元年度も残り1ヵ月となり、もう気持ちは既に令和2年度に向かっていますので、“今年度”“今年”という表現は令和2年度の施策(令和元年度補正予算、令和2年度当初予算)をそう呼ぶことにします。


 通称:IT導入補助金と呼ばれる補助金です。補助額が1年ごとに大幅に上がったり、下がったりと紆余曲折のあった補助金ですが、4年目の今年度は昨年度をほぼ踏襲しています。ようやく落ち着いた制度になりました。


昨年、補助上限が一気に450万円(対前年9倍)に引き上げられましたが、今年度も継続されました。今年度は、A類型の補助額下限が30万円に引き下げられますが、それ以外ではほぼ前年同様です。

 この補助金は、新たに開発するシステムは対象にならず、既存のパッケージシステムorクラウドシステムなど広く販売されているシステムしか補助対象になりません。対象となるシステムは、事前に開発したコンピュータ会社から事務局への登録が必要で、その承認審査もそれなりに時間がかかります。ですから、この補助金を使って導入したいシステムがある場合には、事前にシステムベンダーと相談をし、確実に登録・承認を受けてもらわないといけません。

 さらに、補助額が大きい方のB類型は、求められる機能要件も多く、より綿密な事前準備が必要です。そして、このB類型は採択枠が少なく、県内で採択された企業は、昨年度の場合は一次公募で4社、二次公募で3社と非常に狭き門でした。今年度も競争率は高くなることが予想されます。

 詳細はまだ発表されていませんので公募要領を見てからですが、今年度より要件が緩和されるとは考えにくく、その意味で「おもてなし認証」と「SECURITY ACTION」の宣言は必須だと考えてよいと思います。公募要領の発表を待たずとも準備を始めてよいと思います。すぐに動きましょう!

あまり詳細な情報は掲載されていませんが、チラシもご覧ください。


サービス生産性向上IT導入補助金チラシ


 まずは、公募形態です2つがあります。さらに、生産性向上の見込み成果と補助額によって分けられています。

1.A類型

2.B類型


◆サービス等生産性向上IT導入支援事業

業務の目的

 中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が生産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するための事業費等の経費の一部を補助等することにより、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的とします。

事業の実施期限

原則、3万者程度の中小企業・小規模事業者等に対して補助金の交付が終了するまでとします。なお、中小機構第4期中期目標期間終了(令和5年度末)までを最長とします。

3万者とあるのは、3万社の誤字ではなく応募対象が組合等も含まれるためです。おおよその目安としては3年度で3万者ですから1年度あたりでは1万者、前年比べ微増ですね。(昨年実績:申請数 25,669件、採択数 7,386件)尚、採択者数ではなく、総交付金額で判断するとのことで、採択者数は増減します。

1.A類型

ソフトウェア代金、クラウド利用費、教育訓練経費等を支援。ハードウェア費用は含まれない。

〔補助額・補助率〕

 補助額:上限150万円 下限30万円

 補助率:1/2

〔公募開始〕

3月13日公募開始?

〔申請要件〕

中小企業・小規模事業者等を基本とし、以下の要件のいずれも満たす者。なお、本事業で「IT導入支援事業者」として登録する事業者は補助対象者には該当しません。

一 本事業を実施する事業者の労働生産性について、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上及びこれらと同等以上の生産性向上を目標とした事業であること。

(労働生産性とは、以下の計算式で算出されるものをいう。)

付加価値額/(従業員数×1人当たり勤務時間(年平均))

(付加価値額とは、以下の計算式で算出される粗利益をいう。)

付加価値額(粗利益)=売上-原価

二 事務局があらかじめ認定した「IT導入支援事業者」が登録するITツール(ソフトウェア、サービス等)等を導入する事業であること。

三 申請締め切り日前12ヶ月以内に同一事業(令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)の採択決定及び交付決定を受けた事業者ではないこと。

〔加点要件〕

一 3年間、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を有し、従業員に表明していること。

(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加させる計画)

二 3年間、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準とする計画を有し、従業員に表明していること。

※加点要件は追加の可能性あり。

〔減点要件〕

申請時点において、過去3年間に、類似の補助金(平成28年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業、平成29年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業、平成30年度2次補正サービス等生産性向上IT導入支援事業、令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)の補助金の交付を受けた事業者は、審査上の減点措置を講じる。


2.B類型

ソフトウェア代金、クラウド利用費、教育訓練経費等を支援。ハードウェア費用は含まれない。〔補助額・補助率〕

 補助額:上限450万円 下限150万円

 補助率:1/2

〔公募開始〕

4月公募開始?

〔申請要件〕

中小企業・小規模事業者等を基本とし、以下の要件のいずれも満たす者。なお、本事業で「IT導入支援事業者」として登録する事業者は補助対象者には該当しません。

一 本事業を実施する事業者の労働生産性について、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上及びこれらと同等以上の生産性向上を目標とした事業であること。

(労働生産性とは、以下の計算式で算出されるものをいう。)

付加価値額/(従業員数×1人当たり勤務時間(年平均))

(付加価値額とは、以下の計算式で算出される粗利益をいう。)

付加価値額(粗利益)=売上-原価

二 事務局があらかじめ認定した「IT導入支援事業者」が登録するITツール(ソフトウェア、サービス等)等を導入する事業であること。

三 申請締め切り日前12ヶ月以内に同一事業(令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)の採択決定及び交付決定を受けた事業者ではないこと。

四 3年間、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を有し、従業員に表明していること。

(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加させる計画)

五 3年間、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準とする計画を有し、従業員に表明していること。

六 上記四及び五については、小規模事業者及び取引価格が公的に定められている取引が太宗を占めると想定される事業者(保険医療機関、保険薬局、介護サービス事業者、社会福祉法人、更生保護法人、学校等)は除く。

〔加点要件〕(小規模事業者及び取引価格が公的に定められている取引が太宗を占めると想定される事業者が対象)

一 3年間、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を有し、従業員に表明していること。

(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加させる計画)

二 3年間、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準とする計画を有し、従業員に表明していること。

※加点要件は追加の可能性あり。

〔減点要件〕

申請時点において、過去3年間に、類似の補助金(平成28年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業、平成29年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業、平成30年度2次補正サービス等生産性向上IT導入支援事業、令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業)の補助金の交付を受けた事業者は、審査上の減点措置を講じる。


※以下、A類型、B類型共通要件

〔申請要件の実効性担保〕

〇申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員に表明することが必要。交付後に表明していないことが発覚した場合は、補助金返還を求める。

〇3年間の計画の終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が達成できていない場合に、交付決定の一部取消によって、導入した設備等の簿価又は時価のいずれか低い方の額のうち補助金額に対応する分(残存簿価等×補助金額/実際の購入金額)の返還を求める。

〇なお、財産処分等も含め、補助金の返還額の合計は補助金交付額を上限とする。

(一部文章省略)


◎梶野の解説

 この補助金は、予め承認を受けたITのシステムを使う計画だけが審査対象となります。応募申請をする上で一番の問題は、自社に導入したいシステムが登録されているかどうかという点になります。どんなに良いシステムでも、ベンダー側が承認を受けて登録してくれていなければ、この補助金は活用できません。ですから、早めにシステムを決めて、そのベンダーに登録の有無を確認し、なければすぐに登録をしてもらうことが必要です。登録までには2~3ヵ月かかることもあります。尚、自社のために独自で1から開発してもらうオリジナルのシステム(スクラッチ開発)は補助対象とはなりません。

 昨年度までは、付加価値額(粗利益/総労働時間)は3年で1%上昇させる計画ならば応募できたのですが、今年度は年率3%増(3年で9%増)と、なんと9倍!に条件が引き上げられました。

 経済産業省の意図は、だからこそ「生産性を向上させて、より高い利益をはじき出せ!」ということかと思いますし、「(残業規制により)残業が減るのだから簡単でしょ!?」とも言いたいのでしょう。ものづくり補助金とは逆に増員したらまずOUT。増員せずに、IT活用で人間の作業を減らし、尚且つ粗利を増やす計画が求められます。例えば、IT活用でバックオフィス業務を減らし、その分経理の人を営業へ回して売り上げを伸ばすというイメージでしょうか。(これなら分母を減らし、分子を増やせます。)

 ただ、A類型では、補助上限が150万円ですからシステムの価格は300万円。その程度の投資でそこまで劇的な効果が出せるシステムや業態は限られてくると思います。どちらかと言うとこれまでIT化が遅れている事業者なら可能ですね。

 気になるのは、「申請要件の実効性担保」の部分で、従業員の賃上げ要件はA類型では加点要件なのに罰則対象になっていることです。公募要領では変わるかもしれませんが、このままだと加点要件と言いながら実際は限りなく必須要件と考えられている可能性があります。この点は、公募要領が発表された時に注意する必要があります。


 一方のB類型では、加点要件に対象者が限定されていますね。小規模事業者が300万円から900万円の投資ができる例は少なく、「公的に定められている取引が太宗を占めると想定される事業者」とは何でしょう?まず、“太宗”という聞きなれない単語、私は50数年の人生で初めて聞く言葉でした。中国の皇帝や韓国の王様の廟号としては知っていますが。検索してみると、「大部分、あらかた」ということでした。公的に定められた取引って・・・一般的じゃないですよね?思いつくのは・・・医業ですね。昨年度、採択者名簿に突如医療法人や医院の名前がたくさん出てきて驚きましたが、完全にそこを想定していますね。元々狭き門であるB類型をさらにこんな風に線引きされると、最早一般企業ではかなり難しい補助金になってしまいました。


 そして、もう一つ、今年度の大きな変化は、申請の電子化が行われることです。この補助金は、システムを収めるIT導入支援事業者が代理申請するということで従来も電子申請でしたが、今年度からはjGrantsという補助金の申請・届出ができる電子申請システムが使われることになりました。電子申請にあたっては、事前に「gBizIDプライム」という証明書を取得してIDを持たなければなりませんが、印鑑証明書などを郵送し2~3週間で発行されるということです。従来の電子申請とjGrantsを使った申請では何がどう変わるのか、これも公募開始まで分かりません。但し、審査したい(すべき)内容には大差があるはずがなく、使い勝手の問題だけで内容的には大差はないと思います。


 さらに、新型コロナウィルスの感染拡大の影響はここにもあります。

 2月14日に発表された新型コロナウィルスの感染症の影響を受ける事業者への支援策の中に本補助金も含まれています。 加点要因として取り扱われることが決まりました。ただ、被害事業者は多岐に亘るものと考えられ、対象事業者をどのように絞り込むのかは不明です。セーフティネットの対象業種か或いは対前年売上の減少率かと考えます。追加予算が手当てされるかどうかについても不明です。個人的には、第2次補正予算があったとしても追加予算は付かないのではないかと考えています。



最後に

 この補助金はIT導入支援事業者による代理申請ということで「俺(社長)は何もしなくていいんだろ?」という質問を何度か受けました。残念ながらそうではありません。IT導入支援事業者に渡す資料は自社で作らなければいけませんし、中でも経営計画はIT導入支援事業者には手伝ってもらえません。(手伝ってくれる場合もあります。)それどころか、「申請者の情報部分は自分で入力してください。」と言われることも多いようです。特に経営計画部分は、申請企業側が準備しなければIT導入支援事業者は作れませんからね。

 この補助金に応募申請をされたい方は、ぜひ、経営計画の見直しからご相談ください。採択された申請の支援実績がある私にお任せください。また、ご要望があれば申請書の電子入力時は、横でご支援します。まずは、遠慮なくご相談ください。 お問い合わせフォームでのお問い合わせについては無料です。


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GF経営研究所

主に富山県内で活動する中小企業専門の経営とITのコンサルティング事務所です。

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