続・ちょっと待った!キャッシュレス・ポイント還元事業

 さて、前回で、キャッシュレス・消費者ポイント還元事業の概要を理解していただいたところで、今回は店舗としてどう立ち回ればよいのかに踏み込んでいきたいと思います。

 まずは、注意点から。


〔注意点〕

A.2019年10月~2020年6月までの9ヶ月限定の制度である

 キャッシュレス・消費者還元事業は、いつまでも続く制度ではなく期間限定です。消費者に5%のポイントバックがある期間としてだけではなく、1つ前の記事で書いたデメリット軽減策も期間限定となります。

 例えば、決済手数料については、2020年7月以降3.74%に引き上げると公表している事業者が多くあります。仮に期間内が3.24%だとすると、国の負担分を除いて店舗の負担分は2.16%ですが、2020年7月以降は3.74%と一気に1.58%も引き上げられることになります。

B.決済事業者・決済代行事業者間の囲い込み競争

 前述のように、決済事業者・決済代行事業者等は店舗の囲い込みには激しい店舗獲得競争が繰り広げられると予想されます。

 キャッシュレス・消費者還元事業に参加する決済事業者・決済代行事業者等も事前に国に登録をしなければなりませんが、現在は、仮登録の116社しか公開されていません。もし、今契約中の事業者が登録されていなくても心配する必要はありません。今後増えてくるはずです。事業者にとっては事業拡大の大チャンスですから、おそらくほぼすべての事業者が登録をすると考えられます。

 現在、仮登録の116社の公開データ(キャッシュレス・消費者ポイント還元事業ホームページで公開中)を見ますと、決済できるクレジットカード発行会社の種類やQRコード決済への対応などは、各社様々です。

 また、期間内の決済手数料や期間後の決済手数料なども公開するルールになっておりますので記載されていますが、これも様々です。

 つまり、規定で縛ってサービスの最低保証をする部分と自由に競争させてサービス向上をさせる部分があるということです。このあと登録してくる事業者は、先行公開している事業者のデータを見て決済手数料の引き下げや各種サービスの向上策を出してくると推測できます。また、それを見て先行公開事業者も登録を修正してくるでしょう、よって、連休明け以降サービスの引き上げ合戦が始まり、ある程度までいくと今度は早期に契約を迫るキャンペーン期間設定などがでてくるものと考えます。

C.それでも決済手数料はかかる

 キャッシュレス・消費者ポイント還元事業の実施期間中の決済手数料は、実質上限2.16%に抑えられるが、それでもタダではないということです。

 小規模な飲食店にとって、2%という数字はけして小さくない数字です。これを払うだけの価値があるかよく考えてみた方がいいですね。

 さらに、期間が過ぎれば決済手数料が上がることも考えておかなければいけません。目先の安さに釣られて契約すると期間終了後に経営を圧迫することもあり得ます。一度始めたキャッシュレス決済を今度はやめるとなった時のお客様の反応も考えておく必要がありますね。人間は、既得権益を剥奪されることには強い抵抗を示す生き物ですからね。


 ここで、気になるデータを提供します。「キャッシュレス社会になった方がよいか?」という質問を性別・世代別に集計したデータです。(出典:2018年4月 経済産業省『キャッシュレス・ビジョン』)

 面白いデータですね。

 男性はすべての世代で肯定的、一方女性はすべての世代で否定的です。ほぼ、真逆の結果ですね。これを裏付けるように昨年末に実施されたPayPayの「100億円あげちゃう」キャンペーンでも同様に男性の利用が多く、トップは30代男性だったということです。

 ここから読み取れることは、何でしょう?


 まず、女性には受け入れられていないんですね。一般論としては女性は「お得に敏感」というイメージがありますが、キャッシュレスには当てはまらないんですね。紙のポイントカードやポイントシールも集めているの女性の方が多いイメージでしたが・・・

 男性に比べて堅実志向の女性には、『目に見えないお金』というものにまだ不安を感じておられるのでしょうか?

 そして、意外(私見です!)にも20代は、男女とも喰いつきが良くないですね。デジタル慣れしているので、もっと抵抗なくスムーズに入っていくのかと思ってました。

 さらに意外(私見です!)なのは、シニア男性の喰いつきの良さ。偏見を持ってはいけなさそうです。



 さて、キャッシュレス対応をするのが良いか、しないのが良いか・・・

 先に断っておきますが、すべての店舗に当てはまる共通解はありません。1店舗ごとにその店の客層や業態等を考慮して、総合的に判断する必要があります。けして単純な理由で判断しないようにご注意ください。

 また、お客様は、ご自分の都合で「なぜキャッシュレス対応しないのか?」「他の店では使えるのに、なぜここでは使えないんだ!」とおっしゃいます。しかし、知識豊富な方でなければ、店舗が決済手数料を負担してキャッシュレス決済に応じていることを知らないかもしれません。そして、ご自分の求める方向に副って他店と比較されます。導入しない場合は、そういうことも想定に入れておく必要があります。


 では、結論です。

 まず、10月の増税で、個人客を相手にしている店舗の多くは、売上が下がります。消費者は、収入は増えないのに増税分支出が増えるわけですから、間違いなく緊縮財政になります。最初に狙われるのはお父さんのお小遣い。月3万円→2万5千円になれば、飲みに行く回数を1回減らすか、欲しい物を1つ我慢しなければならなくなります。来店頻度が下がるか、客単価が下がるか、或いはその両方で売上が減少します。

 現状内税にしている店舗では、さらに苦しくなります。増税分補えばお客様にとっては値上げになり客離れを起こします。かと言って、価格維持をすれば増税分利益が消えます。値上げもできない、維持もできないという立ち往生状況に陥ります。

 一方、仕入れの方を見ますと小規模店舗の大半は簡易課税の恩恵で消費税の差益が出ていたでしょう。その場合、消費税の増税によって実質的には益税が減る分経費増となります。そこに人材難で、従業員コストも上昇を続けています。

 つまり、売上減少と経費増のダブルパンチで、10月以降はますます利益率が悪くなることを想定しておかなければいけません。前提条件として、これらのことは踏まえておく必要があります。


1.自店のお客様(客層)をよく考える

 まずは、客層です。女性客が多いなら、しばらく様子を見てみるのも手ですね。10月以降でも加盟店登録はできますから。逆に男性客が多いなら、導入を検討する必要がありそうです。検討した結果キャッシュレス対応を見送ったなら、お客様にも堂々と説明できます。大事なことは、一方的に店の事情だけを考えるのではなく、お客様のこともよく考えて決断することです。

2.自店にとってのメリット、デメリットをよく比較する

 一般論でのメリット・デメリットは参考にはなりますが決定的要因ではありません。自店にとってはどうなのか、よく見比べて検討しましょう。この時、頭の中だけで考えず、一度紙に書きだしてみると冷静に、客観的に判断できます。

3.考えられる対応手段を書き出してみる

 1、2を踏まえて、消費増税の向かい風にどう立ち向かえばよいか、対応手段を思いつく限り書き出してみます。書き出したものを比較検討して、組み合わせて見るも1つの方法です。例えば、こんな対応が有効かもしれません。

 ・キャッシュレス対応する代わりに消費税分も値上げする

 ・値上げをせず、キャッシュレス対応もしない。ハッピーアワーを始めドリンク売上を増やす

4.判断を急がない

 前述のとおり、後から後から好条件が出てくる可能性があります。決済事業者・決済代行事業者等の囲い込み戦略に乗って、慌てて契約してしまわない方がよいでしょう。事業者は自社の都合でアピールしてくるのであって、あなたの店のことを考えてくれているわけではありません。

 導入するにしても、各社の条件を集めて比較して、自店にとって一番良い選択は何か自分達(家族も含めて)の頭で考えることが大事です。


 それでも、結論が出ない、或いは専門的見地でアドバイスがほしいなどありましたら、遠慮なく私にご相談ください。

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主に富山県内で活動する中小企業専門の経営とITのコンサルティング事務所です。

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