ちょっと待った!キャッシュレス・ポイント還元
3月28日に成立した平成31年度予算が成立し、大慌てで4月12日に立ち上げられたサイトがあります。『キャッシュレス・消費者還元事業』のホームページです。
この秋の消費税増税に伴い同時に施行されるクレジットカードやQRコード等を用いてキャッシュレス決済を行った消費者に対して5%のポイントが還元されるというあの制度の周知・啓蒙・情報提供のためのサイトです。いかにも大慌てで突貫制作・公開されたサイトらしく、5月5日現在でもまだ「後日公開」と書かれたコンテンツがいくつもあります。
とは言え、総額2,798億円の大型予算がついている一大事業です。うまく立ち回って事業の追い風にしたいものです。
さて、マスコミ等は消費者目線で、「10月が待ち遠しい」というスタンスで取り上げていますが、対応する飲食店や小売業等の立場で見るとどうなんでしょうか?
ここでは消費者目線ではなく、店舗目線で取り上げて行きたいと思います。
最初に申し上げておきたいことは、こういう大型予算が動く時には、関係する事業者からかなり積極的なアプローチがあります。今回の場合で言えば決済代行事業者やQRコードの決済事業者にとっては顧客(契約店舗・保有消費者)獲得の大チャンスであり、市場規模は2020年には100兆円規模になるとの予測もあります。9月末までの市場シャアがその後の勢力図となるため、激しい顧客争奪戦が繰り広げられることが予想されます。
では、まず何がキャッシュレスの対象となるのかということですが、「クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードなど一般的な購買に繰り返し利用できる電子的決済手段」と定義されています。電子マネーとは、楽天Edyやwaon、nanako、iDなどです。QRコード決済は、PayPay、LINE Pay、楽天ペイなどのことです。(いずれも一例であり、他にもあります。)
これらを用いて決済をした場合に、その消費者に対して5%のポイントバックがあるという仕組みですが、その5%の負担は2,798億円の予算の中から支払われますし、ポイントの還元も発行会社或いは決済代行会社が行いますので店舗はノータッチです。
では、店舗側は全く無関係かと言うとそうではありません。次にキャッシュレス対応による店舗側への影響、メリット・デメリットを確認しましょう。
〔メリット〕
1.お客様のニーズに応えられる
ポイントやマイルを貯めたいお客様や多額の現金を持ち歩きたくないお客様のニーズに応えられます。さらに、10月から実施される消費者還元ポイントバックによって、その需要は更に高まることが予想され、顧客流失を防ぎます。また、外国人旅行者への対応力が上がります。
2.現金管理が不要になる
完全にキャッシュレス化すれば、店内に現金を置く必要がなくなり、その管理が不要になります。つり銭準備のための両替などの手間もなくなります。完全にキャッシュレス化しなくても、毎日の〆時の現金集計が楽になります。
3.従業員不正が防げる
お客様との現金授受に関する不正(抜き取りなど)が防げます。
〔デメリット〕
(1)決済手数料の負担が増える
決済代行会社等に支払う決済手数料の負担が増えます。その分利益を圧迫します。以前は、手数料が決済代金の5~6%もありましたが、今はそこまで高くないようです。
(2)代金回収に時間がかかる
現金と違って回収までにタイムラグがありますので、 資金力が必要になります。以前は、2ヶ月後なんてこともありましたが、現在は改善されているようです。
(3)機器代がかかる
QRコード決済では、電子的に表示して決済しますので、スマホかタブレットがあれば機器は不要です。紙で印刷したQRコードをお客様に読み取っていただく方式もあり、それならスマホやタブレットも要りません。クレジットカード等それ以外の決済手段では、カードリーダー等の機器代が必要となります。
さて、冒頭に紹介したキャッシュレス・消費者還元事業の予算の使いみちは、消費者還元だけではありません。実は、キャッシュレス対応を行う店舗側にも使われます。これまで店舗側がキャッシュレス導入に動かない理由だった上記のようなデメリットを軽減する施策となっています。それは、次のようなものです。
(1)決済手数料の負担に対して
『キャッシュレス・消費者還元事業』に参加する決済事業者・決済代行事業者等は、決済手数料を3.25%以下にする規定があります。ほとんどの事業者は、10月以降3.24%に設定しているようです。(事業者によって違います。)更に期間中の9ヶ月間は決済手数料の1/3を国が負担してくれますので、期間中の店舗側の負担は実質2.16%以下となります。
(2)代金回収に時間がかかることに対して
こちらも『キャッシュレス・消費者還元事業』に参加する決済事業者・決済代行事業者等に対し国から要請(指導?)があり、1ヵ月以内に入金があるようです。随時で申請すれば翌日だったり、月5回の支払い設定日があったりと短期回収に向かっています。(事業者によって違います。)
(3)機器代の負担に対して
これについては、決済事業者・決済代行事業者等が店舗に対してカードリーダー等の決済端末を無償で提供・貸与する義務があります。従って、店舗側はタダで決済機器を手に入れることができます。
以前に比べて、間違いなく導入障壁は下がったと言えます。ただ誤解しないでいただきたいのは、導入した方が良いと勧めているように見えるかもしれませんが、そういう意図はありません。
一見良さそうに見えても注意点がありますので、その点も見てください。その点については次の記事でご紹介します。
尚、キャッシュレス・消費者還元事業に店舗が参加するには、国に加盟店登録として届け出なければなりません。しかし、この届け出は、決済事業者や決済代行事業者が代理申請するルールとなっていますので、店舗側はお任せするだけです。現在はまだ加盟店登録を受け付けていません。5月中旬予定と事前告知されていますので、受付開始になればキャッシュレス・消費者還元事業ホームページに掲載されますし、決済代行事業者等から激しく勧誘があることでしょう。
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