企業のAI導入における共通の悩み
今日はAIシリーズ第3弾です。
今日は、企業がAIを導入しようとすると必ずぶち当たる悩みです。
先日、私が所属するNPO法人ITコーディネータ富山(略称ITC富山)が主催する企業様との合同勉強会『情シス勉強会』の第6回が開催されました。
この勉強会は、とても有意義で価値ある活動だと考えていて、個人的にはITC富山の活動の中で最も好きな活動です。
第6回というのは今年度の第6回じゃなく、初開催からの通算開催数で年1回さえも開催できていないのがとても残念です。
当会もメンバー(の無償労力)不足で企画・運営担当者ができないのが原因です。
それでも、当会の会長が尽力してくれたおかげで、去年、今年と2年連続で開催できて、しかも前回開催から8ヵ月後だったので感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、その第6回情シス勉強会では、錚々たる県内超有名企業から多数ご参加をいただきました。
意見交換会では、さながら“お悩み共有会”のような状態になり、とても活発な意見交換がなされる理想的な場となりました。
私達ITコーディネータは、ただ聞いているだけで十分でニコニコと拝聴しておりました。
テーマはAIだったのですが、特に集中した話が2点でした。
1.AI活用のルール策定
2.DX人材の育成
これは、AI導入やDX推進でほぼすべての企業に立ちはだかる関門のようなものではないでしょうか?
1.AI活用のルール策定
「どういうルールを作るべきか?」という話がとても白熱しました。
恐らく、いろいろなセミナー等でたくさんの情報を集めておられ方々ですが、それでも悩んでいらっしゃるという興味深い事実を目の当たりにしました。
企業内にある制限情報がAIを活用することで学習データに利用され情報漏洩することに対する懸念ですね。
制限情報は、自社の情報と取引先(特に顧客企業)の情報の両方ですね。
言い換えれば、これを懸念されている経営陣が多いということでしょう。
2.DX人材の育成
DX人材の育成とまとめましたが、折角導入まで漕ぎ着けても現場社員からは不満ばかりで生産性向上には程遠い。それどころか、使ってくれない社員も多いということではないかと思います。
膨大な時間を使い、数々の問題・課題を解決をして導入に漕ぎ着けた結果が不満ばかり返ってくるのでは愚痴の一つも言いたくなりますよね。
まずは、これを解決しましょう。
これについては、以前から感じていて、自分なりに分析・整理しています。
スキルの高い方は、「8割解決してしてくれれば十分に役に立つ。」と考えており、スキルの低い方は、「100%の答えを返してくれなければ使えない。」と考えておられる傾向があります。
少し脱線しますが、OCRの場合はさらに厳しい精度が求められます。
「使える」とされる文字認識率の一般的な基準は、90%以上です。
これは納得ですね。80%だと原稿用紙1枚の400字で80文字がご認識ではストレスが高さそうですよね?40文字くらいが限度じゃないですか?
<OCRの認識率の基準>
「使える」という認識率は、用途によって異なります。
一般的な事務作業:90%以上が目安です。例えば、書類の電子化やデータ入力の効率化など、誤認識があっても後から手動で修正できる用途では、このくらいの認識率があれば十分業務効率を改善できます。
専門的な業務や自動化:95%以上、できれば99%以上が求められます。
AI-OCR使ったサービスでは、理想的な条件下で95%以上、中には98%〜99%という驚異の認識率を達成するものもあるようです。
一般的な事務作業に比べて高い認識率が必要になるのは、そうでなければこの業務も専門知識を持った方がやらなければならなくなり、効率改善にはつながりにくいからです。
さて、本線に戻ります。
スキルの低い方が高い精度を求める理由
スキルの低い方が高い精度を求めるのは、そのシステムを『魔法の箱』のように捉えているからではないでしょうか?
彼らは、入力された情報が100%正確な形で出力されることを期待し、それ以外の結果は「失敗」と見なします。
理由①知識と経験の不足:ツールが生成する不完全な結果をどのように修正し、業務プロセスに組み込むかという知識や経験が不足しています。
理由②依存度の高さ: ツールに頼り切っているため、ツールが期待通りに機能しないと自分自身で対応する術がありません。そのため、少しでも手間がかかるようなら、「使えない」と判断してしまいます。
理由③リスク回避:完璧ではないツールを使うことによって生じるかもしれないミスを恐れ、安全な手作業(従来通り)の道を選びがちです。
スキルの高い方が許容度が高い理由
一方、スキルの高い方は、システムを『強力なアシスタント』として捉えます。彼らは、システムが完璧ではないことを理解しており、その不完全さを補う自分のスキルを持っています。
理由①ツールの特性理解: OCRや文字起こしなどの技術やシステムの限界を理解しています。そのため、完璧さを求めず、「どこまで自動化できるか」という視点でツールを評価します。
理由②プロセス全体を俯瞰する力: 彼らは、ツールの導入によって業務プロセス全体がどれだけ効率化されるかを判断します。仮に認識率が90%でも、手作業でゼロから行うよりも、90%が自動化され、残りの10%だけを手直しする方が圧倒的に速いと計算できます。
理由③問題解決能力: 誤認識やエラーが発生しても、それを手作業で迅速に修正したり、別のツールと組み合わせて解決したりする能力があります。これは、彼らが「ツールを使っていかに効率を上げるか」という目的を達成するための手段の一つとして、システムを捉えているからです。
結論
私の得意とする日常的な表現をすると以下のようになります。
スキルの低い方・・・インスタントラーメンや冷凍食品のようなものを求めている
スキルの高い方・・・クックドゥや鍋セット(具材をカットしてセット販売しているもの)
どうですか?分かりやすくないですか?
スキルの低い方にとってのシステムやツールは、自分自身にスキルが求められず、お湯を沸かすか電子レンジでチンなど、ほとんど何もしなくても食事(成果)にありつけることを求めていて、スキルの高い方は、おいしく調味料が配合されていたり、具材がカットした状態で購入できるなど、ある程度の工程を削減できればいくつかの工程が残っていても全然構わないという考え方の違いです。
この考え方は、多くのITツールや業務改善の場面で当てはまります。ツールの導入効果を最大化するには、ツール自体の性能だけでなく、それを使う人々のスキルアップやマインドセットの変革も不可欠です。完璧なシステムを求めるのではなく、不完全な部分を人間のスキルで補い、全体として生産性を向上させるという考え方 が、これからのデジタル化社会ではより重要になるでしょう。
結局のところ、AI活用でも、DXでも、それを使う大多数の人員の考え方を正しく整えるマインドセットが最重要と言えるのではないでしょうか?
そして、それは一般社員に限ったことではなく、経営陣も同様にマインドセットしないと・・・
次回はいよいよ本丸です。(最終回)
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